ライトを当てると、ミカの体は輝きを増して!
クラブ「スペース・カプセル」の社長さんは、30代の若さ、お父さんもダンスホールやクラブなどを経営していた方で、山名雅之さんは、自ら水商売の神様だと豪語していた。
石原慎太郎さんと友人で、山名さんと奥さんとの結婚式には、仲人をされたということだ。お店にも石原さん、よく顔を出していた。「月刊SHOW MAGAZINE=芸通・NO.96」に、こんな紹介が載っている。
「TBSスタジオに近く、赤坂の繁華街からそれた静かな一角にある。
ハイセンスで、ユニークなクラブとして、オープン以来、数々の話題をまいた店で、土地柄、芸能人や文化人の常連が多い。
入口はレジデンスの右角で、英文字で地味に「SPACE・CAPSULE」とあり、その下にスライドが映写されているのが珍しい。
店内は天井一面に小さな銀色の球体が無数につり下がり、周囲の壁はステンレス、椅子やテーブルは黒一色。ミステリアスな三次元の世界に入ったようなムードに誘い込まれる。
点滅を続ける照明と、GSバンドの演奏効果に加えて、フロアショーはモダンアートの本格派たちが粋をこらして番組を構成している。
都会派のインテリなら一度は訪れて、前衛感覚の何たるかをここで把握しなければ損するような店である。
ショータイム・9時・11時」
前衛芸術家をショーに参加させるなんていうことはなかった時代だったから、山名社長は先見の明があったといえよう。
ミカは、「O嬢の物語」、続いて「愛奴」の公演と大成功を納めて、マスコミの話題をさらったので、演出家のた竹邑類さん、イラストレーターの宇野亜喜良さんの紹介で、「スペース・カプセル」のショーに加えてもらうことになった。
僕は、何をやっていたかというと、ミカの裸身にライトを当てる照明係だった。これは緊張の連続で、少しでもミカの裸身が美しく見えるように光を当てなければならない。
ミカの普段の顔は、美人とはいえないが、踊っている時のミカは美しかった。踊っているうちに皮膚が輝き出し、体から滲み出てくる迫力、気迫は観客を圧倒した。
「静かの海」というショーの時は、山本寛斎さんがデザインした、ステンレス製の円盤(月を象徴したものだ)を、くさりで背中にしょって踊った。重さが20キロもあるから、くさりが当たる肩の部分の皮膚のところは、破れて血が出やしないかと心配したが、少し赤くなるぐらいで、意識を集中させているから、痛くないとミカは言う。
「内外タイムス」という新聞が、こんな記事を載せている。
「さて、この日は『O嬢の物語』、『愛奴』などで知られる女性舞踏家、伊藤ミカの出演。舞台といっても三方を客席に囲まれた狭いフロアなのだが、その客と顔突き合わせんばかりのすぐそばで、金属製の円盤、すなわち〈月〉をクサリで肩に十文字に背負い、身につけているのは下腹部の三角布だけという、異様でエロチックな格好の伊藤ミカが、これまた裸形の若者二人を相手に踊りまくる。
スポットにくっきりと浮かび出た、伊藤ミカの白い裸体は、なにしろ客席のド肝を抜くに十分で、若いアベックや、デップリした重役タイプ、青い目の外人もまじった客席は、シーンとかたずをのんだ静けさ。」
当時は、テレビの取材はなかったが、週刊誌のグラビア、スポーツ紙が、ミカの踊りを報じてくれた。(つづく)
●ミカと僕との、仙台の七夕祭りに行く、満員のお客を乗せた夜汽車の中で出会いから、33歳で事故死するまでの15年間を綴った本が、いよいよ「彩流社」から、5月頃発売される。タイトルは『裸の女房=裸でデビュー、裸で死んだ前衛舞踏家、伊藤ミカ』。定価は未定だが、6、7年の歳月をかけて書いたものだ。なぜ、ミカは性をテーマに舞踏を創作したのか、なぜ、裸で踊ったのか、死後39年経ってぶちまけた話題作になることは間違いない。乞う、ご期待だ!
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