2009年12月20日 (日)

無残!切り倒された桜の老木!

 桜の木の「染井吉野」の樹齢は、人間と同じくらいで7、80年ぐらいだそうだ。我が家のすぐそばに緑道があって、再生した下水の水を流して小川のようになっている。その両側には桜の木が植えられていて、春ともなるとお花見で大変な人手でにぎわっている。

 環状7号線の通りから、淡島の東急のバスの車庫のあるところまで、何百本という桜の木が植えられているが、そのルーツを知っている人は少ない。

 僕が生まれたのは昭和7年の3月19日で、青山の隠田(おんでん)というところだそうだが、生まれて百日目ぐらいに代沢の地に越して来たようだ。

 その頃の父が撮った写真には、桜並木が植えられたばかりで、倒れないようにくいで支えられている。僕が今年で77歳だから80年ぐらいの樹齢と考えられる。

 この桜の木を寄付した人は、鎌倉通りに面した豪邸に住んでいた松崎さんという方で、昭和の初期に建売住宅で財を成した人で、鎌倉橋のたもとに記念の石柱が建っていた。それが倒されって川の中に投げ込まれていた光景が、僕のまなこに焼き付いている。

 松崎さんの豪邸は、戦後、何人かの手に渡って、今ではマンションに変わってしまった。

 桜の木も寿命がきているものもあって、区の土木課では、切り倒して新しい苗木に植え替えている。

 木に空洞ができているものもあって、風で倒れたりして、けが人でもでたら大変だということで、何本も無残にも切り倒されてしまった。

 77歳の僕も、桜の木と同じような運命にあるので、切り倒された桜の木を見ると、自分の首を切られたような気持ちになってくる。

 まだまだ桜の木も、春になれば花を咲かせ人々を楽しませてくれるだろうに。どん底に落ちた僕だって桜の老木に負けないように、もう一花もふた花も咲かせようと頑張っているのに。

 あちこちにある切り倒された桜の老木の切り株を見て、心ある人は嘆いているに違いないのだ。

 この緑道をボランティアで草を抜いたり、花を植えたり、掃除もしている「代田川緑道保存の会」の会長の林清孝さんに話を聞いたら、今年、区で桜の木を若木に植え替える予算がとれているので老木を切り倒しているのだそうだ。1本植え替えるのに35万円かかるというが、まだまだ5年や10年は生きられる桜の木を切り倒す必要があるのだろうか。

 お役所はなんでもかんでも、年度内に予算を使い切らないといけないようで、予算をとっておくということをしない。

 お役所の犠牲になってしまった桜の老木たち、怨んで化けて出てくるかもしれないぞ。

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2009年12月19日 (土)

挫折乗り越え出版した本が朝日に!

 今年の日本シリーズで優勝した巨人軍の阿部捕手がお立ち台の上で「最高で〜す!」と叫んだ、あの気持ちが僕にも当てはまる。

 1970年(昭和45年)の1月11日、33歳の若さで酸欠死してしまった先妻の舞踏家、ミカ(本名・君子)。あれから39年の長い年月が流れ過ぎている。

 マスコミに多くの話題を提供したミカが亡くなった時、週刊誌やスポーツ紙がその死を報道してくれた。

 それらを読まれた女流作家の丸川加世子さんが、ミカのことを小説にしたいという申し入れがあり、日記、写真、週刊誌などの切り抜き帖などをお貸しした。

 仙台の七夕祭りに行く超満員の夜汽車の中でのミカとの出会いから事故死するまでの15年間を何日もかかって話をした。

 1971年(昭和46年)の8月1日発行の『小説現代』(講談社刊)に、「被虐の舞踏家」というタイトルで掲載された。

 その後、1周忌も待たずに再婚し、日本初の同性愛誌『薔薇族』を創刊させたことで忙しさにまぎれて、丸川さんに資料をお貸ししていたことなど、すっかり忘れてしまっていた。

 しかし、ミカにとっては作品の芸術性よりも「裸」ということだけに、マスコミのスポットが当てられてしまったことを気にして、なぜ、裸で踊るのか、なぜ、性をテーマにした踊りを創作するのかということを世の中の人に訴えたかったに違いない。

 それができるのは僕しかと思うと、なんとしても本として残しておきたいという思いがつのるばかりだった。

 なんとすっかり忘れていた丸川さんにお貸ししていた資料が数年前に戻って来たではないか。まさにタイム・カプセルのふたを開けるような思いだった。

 しかし、それからが僕にとって、次から次へと多くの試練が待ち受けていた。『薔薇族』の廃刊、左膝の人工膝をつける手術。75年住み慣れた家と土地を信用金庫にとられての狭いマンションへの引っ越しと。

 6畳2間だけの狭いマンションでは、机に向かって原稿を書いているすぐそばに女房が座っている。

 女房の久美子が知らんぷりしてくれていなければ、この本は生まれなかった。世界大不況の中、ネットの出現で、今や出版界は苦境に追い込まれている。2社に断られ、やっと彩流社が出版を引き受けてくれたが、初刷りはたったの2000部だ。

 6月に出版され、共同通信社文化部が、すぐさま僕の写真入りでインタビュー記事を全国の有力地方紙、30紙に配信してくれたというのに、ほとんど反響がなかったそうだ。

 朝日新聞社会部の小泉信一記者、10年ほど前に、初めて『薔薇族』を紹介してくれた人だ。小泉さんは人情に熱い人で、下町の売れない芸人などを記事にしたりしている。著書に『東京下町』(創森社刊)があり、最近、朝日新聞出版から『お〜い、寅さん』(本体900円)も出された。

 自ら志願して日本最北端の稚内におもむき、支局長を勤めるなどの変わり者だ。そこで記事にした高倉健の話を読んで、朝日新聞の社長さんが感動して小泉さんに電話をかけてきたそうだ。

 小泉さんは自分が書いた『裸の女房』の記事のゲラ刷りを読んで、涙を流したと電話をかけてくれた。短い文章の中に、全身全霊をこめて書く。心のこもったいい記事を書く記者は少ない。そんな小泉記者が記事にしてくれた僕は幸せ者だ。

 もう本は売れなくてもいい。朝日が記事にしてくれたということは大変なことなので、まさに「最高で〜す!」と叫びたいぐらいだった。。

 銀座のキャバレー「白いばら」での出版記念会、この不況のおりに、、大枚1万円の会費を払って集まってくれた多くの友人、知人たち。出席できないのにカンパしてくれた人たち。こうした僕を支援してくれる良き友人、知人たちがいる限り、いい仕事を残して多くの人たちの友情に報いたいと思っている。

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2009年12月16日 (水)

いつの世も庶民税金で苦しがり

 僕の父は美しい文字を書く人だった。僕は母親似なのか、文字を書くのは苦手だ。自ら鉄筆を使って、謄写版で小冊子を作っていた。

 昭和52年(1977年)4月27日発行とある『川柳から見た、税の戦後30年史』がみつかった。父の肩書きは、日本川柳協会常任理事・番傘川柳本社同人で、ペンネームは柳涯子と号していた。晩年は川柳家として活躍し、草津のハンセン病の患者たちにも、ボランティアで川柳を指導していた。

 あとがきにこんなことを記している。
「川柳というものは、今から二百年ちょっと前に、江戸の浅草に起こったもので、今日では関東より、関西から九州の方で盛んであります。
 風刺とか、ユーモアとか、うがちといったものが主となった、俳句の弟分に当たる短い17文音字の文芸であります。
 税と税務署に関する句を並べて、戦後30年の歴史を辿ってみましたが、川柳って面白いなとおわかり頂ければ幸いです。
 私は世の中を明るく、かつ楽しくするために川柳を作り、川柳を広める努力をいたしております。」とある。
 
 古希近くしてマイホームやっと建ち

 美術館を造ってしまった、僕の道楽で父がやっとの思いで建てた家も土地も失ってしまった。その上、右から左に素通りして、信金にとられてしまったというのに固定資産税がどかっとかかってきて苦しんでいる。

 しかし、税務署は悪代官のような信金と違って、しぼりとろうとはしない。払う意思があって、少しずつでも払っていれば無理なことは言わない。

 「昭和25年、シャウプ勧告(アメリカからの勧告だろう)によって税制改正、厳しい税金に怨嗟の声起こる。税金苦から一家心中を図る者あり。中小企業の倒産続出。)と父は解説している。

 死ぬものは死ねと税金取りたてる(笑草)

 税務署の方へ人魂今日も飛び(桟司)

 税務署の方かと親父火事を聞き(種太郎)

 こんな時代を会社の経営者や商店の親父さんたちは、逞しく生き抜いて来たということだ。今時税務署の差し押さえも強引ではないようだが、この時代、差し押さえのトラックが街中を走っていたようだ。

 引越しのように積んでいる差押え(夜潮)

 差押えされて病人飛び起きる(梅隠居)

 投票をした内閣の税で死に(柳葉女)

 微税書生かしておかぬように来る(日の丸)

 税金を飲んで税金忘れよう(圭佑)

 僕は煙草を吸わないからいいようなものの、煙草の税金をあげようとしている。煙草を吸う人ってやめられるわけがないから、今に戦後のようにモクひろいでもすることになるかも。父の句にこんなのがある。

 税務署の敷居だんだん低くなり(柳涯子)

 父は税金を払うのが好きで、僕には給料をくれないくせに、税務署はいい顔をしていたようだ。僕の即挙の句。

 税務署親切すぎて気味悪い(文学)

 Photo父と僕と写っているのは、この写真だけ。


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2009年11月25日 (水)

偉大な男だった、ぼくの祖父。

 昭和5年6月(今から79年前)に中央公論社から刊行された、沖野岩三郎さんの著書「娼妓解放哀話」(1円20銭)に、僕の祖父、伊藤冨士雄のことが書かれている。

 沖野さんが直接、祖父から話を聞いてまとめた本だ。

 「昭和5年4月号の『中央公論』に掲載された救世軍少将、山室軍平氏の伊藤冨士雄を評した一文を左に引用して、伊藤氏の総評にかえる。

 伊藤君はおよそ1200人の芸娼妓の面倒を見て、そのうちの987人を無事に廃業させ、それぞれ堅気(かたぎ)の生活をさせたのです。

 僕は伊藤君のことを思うたびに、実に偉大な男であったとつくづく感心する。なんとなれば伊藤君があの救済運動をするうえには、いつも3つの大きな危険がのぞんでいたからです。

 3つの危険というのは第1に暴力です。いつかもお話ししたように、伊藤君は毎日、家を出るとき、いつ、どこで殺されるかもしれないという覚悟をしていたのです。

 半死半生の目にあわされたことが2回、蹴られたり、殴られたり、石を投げられたことは何百回かわかりません。

 それでも伊藤君は平気なものでした。第2の危険は金力でした。金銭でもって人を売買できると考えている樓主(ろうしゅ)たちです。従って人間でも金銭で左右できると思うのは当然です。

 987人の娼妓ひとりにつき、100円ずつ樓主(くるわの主人のこと)側から出しても9万8700円じゃないですか。それだけで稼業を続けさせたなら、樓主はその何倍の利益をみることができるのですから、伊藤君がもし少しでも金に目がくらんでいたなら、どんなことでもできたのですが、実に潔白に身を保ってくれました。

 第3に異性の力でした。男子という男子はことごとく餓鬼(がき)のようにして色を漁る者だというじっけんばかり持っている婦人の前に、たったひとり、伊藤君だけが真実、女性の味方となって、生命がけで働いてくれたのです。

 しかも情が深くて男らしい勇気にみちていたのです。そんな男が千人からの女性の真ん中に立って、神様のように尊敬されているんですから、大きな誘惑の力が、彼の上に襲ってきたことでしょう。

 けれども伊藤君は毅然として誘惑の上を踏み越えて戦ってくれました。本当に感謝にたえません。」

 娼妓を救世軍に救い出されてしまうと、樓主はお金で女の親から買っているのですから、損をしてしまうので祖父のことをお金で買収しようとしたようだ。

 樓主のおかみさんが、祖父の留守に自宅を訪ねて来て、祖母にトイレを貸してくれと言って、トイレの中に多額のお金を包んだものを置いていったそうだ。そのお金もすぐに祖父は樓主に返しに行ったと祖母から聞いたことがある。

 僕の母親が年老いてから杉並にある救世軍が経営する病院で、亡くなるまでお世話になってありがたかった。今の病院は三カ月で患者は追い出されてしまうシステムになっているから。

 担当の医師から、「救世軍人とはいっても、人間ですから」と、お金を要求されてしまった。いくら医師に握らせたかは忘れてしまったが、それから亡くなるまで面倒をみてくれた。

 お金をあげるとき、祖父のことをふと思い浮かべたが、世の中、すべて変わってしまったのだから、救世軍の医師を責めるわけにもいくまい。人間みんな悪くなってしまったのだから。

Photo暴漢に襲われて負傷した祖父


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2009年11月 6日 (金)

オナニーから『薔薇族』へと!

 僕が『薔薇族』を創刊しようと思う、発想の原点になった本がある。今は亡き秋山正美さんの著書、『ひとりぼっちの性生活=孤独に生きる日々のために』(昭和41年刊・第二書房)である。

 この本のあとがきに、秋山さんはこんなことを書いている。

 「自分ひとりの性生活は、人類の歴史とともに実在していながら、地図の上にはいまだかつてのせられたことのない、不思議な大陸のようなものである。それ自体異常ではない性のあり方として認められる諸条件を持ちながら、自分ひとりの性生活は、とかく異常な生活の一部として、無視されたり、さげすまされたり、ゆがめられたりしてきた。」

 この時代に、オナニーのやり方を出す出版社は、僕しかいなかったに違いない。秋山さんはあちこちの出版社に原稿を持ち込んだが、どこも出してくれるところがなくて、僕のところに持ち込んできたというわけだ。

 わが第二書房は、僕ひとりだけの出版社だから会議を開く必要はない。僕が決断すればそれで決まってしまう。

 秋山さんは異性のことを考えながら、オナニーをしている人のために書いている。僕もそう思っていた。しかし、その反響は男のことを考えながら、オナニーをしている男からの手紙が多かったのだ。

 それから僕の発想はひろがっていき、『薔薇族』の創刊へと結びついていったのだ。

 青森県のH坊という、16歳の高校生からこんな手紙をもらったことがある。

 「みなさんは週にどれくらいオナニーをしますか?僕は週に7回ぐらい。やり方はごく普通、変わったことといえば、やるときは必ず素っ裸になることぐらいかな。
 でも、『薔薇族』を手に入れた日は大変です。その日、1日に8、9回、多い日には10数回も。考えられないと思うでしょうが事実です。
 この本の写真を見て、2回ぐらいまでは真っ白なのがドバッと、でも10回ぐらいになるとチョビッと。最後にはチンポが痛くなり真っ赤にはれます。
 この時にはもう、ゴムのようにフニャフニャ。快感よりも痛さの方が先にたつみたい。それでも最後までやり通すのです(何ごともこのようならばいいのですが)。
 でも愛せる相手がいないもん、しょうがないです。僕だって相手に口でされたいと思います。愛し愛されたいです。しかし、とても恐ろしいのです。
 男と男の出会いはすばらしいものでしょう。が、男と男の別れは、ただただつらく悲しいものなのでは? もし自分がそうなった時を考えると、とてもつらい・・・。今のところはオナニーで幸せです。やっぱり僕は異常なのでは・・・?
 オナニーをやった翌朝は、よく自分がホモであることを自覚し、そして誇りを持つように努めています。こうしないと自分を見失うかもしれない僕。最後にひとこと、ホモは異常ではない。」

 猿がオナニーを覚えると、死ぬまでやり続けると誰かに聞いたことがあったけど、オチンチンが真っ赤になるぐらいやり続けるとは。

 この時代には「ラブ・オイル」なんていうものが存在しなかったから仕方がないけれど、相手の男がいたってオナニーをしている人はいっぱいいるのでは。

 僕も学生時代、オナニーで悩んでいたから、それが『薔薇族』につながったということだ。

 人間の欲望って、年齢を重ねても終わりはない。だから生きていられるのかも。

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2009年10月21日 (水)

「相棒」の新コンビはミスキャスト!

 「テレビ朝日」の人気番組、「相棒」の新シリーズが始まった。主人公・杉下右京(水谷豊)と、長年の相棒だった亀山薫(寺脇康文)が前期で退職、代わりに公安畑から〝飛ばされた〟神戸尊(及川光博)が新たにコンビを組む。

 僕はこの新しいコンビは全く気に入らない。キザな杉下右京(水谷豊)となぜ対称的な役者を選ばなかったのか。ごっつい体育会計の短髪でイモみたいな役者とコンビを組むから見ていておもしろいので、杉下右京に輪をかけたような及川光博のキザっぽさは鼻持ちならない。

 ひたいにかかる髪の毛を首を振って持ち上げる仕草を見るといやになる。これは完全にミスキャストではないか。

 夫婦だって亭主がおとなしい人ならば、女房は男っぽい女を選ぶだろう。

 これが「相棒」でうまくいくのだろうかと、見るものに思わせなければおもしろくない。同じような性格の「相棒」ではダメなのでは。

 最近のドラマの製作はテレビ局が製作するのではなくて、映画会社の「東映」に製作させているようだ。その方が製作費が安くてすむからだろう。

 テレビ局も、新聞社も、出版社もみんな苦しくなっている。最近はNHKのテレビだけがよく見えて来るから不思議だ。

 「水戸黄門」にしても、「子連れ狼」にしても古い作品の方がお金もかけているし見応えがある。

 「水戸黄門」の助さん、格さんにしても、今放映中の役者の体格が貧弱で、それが多くの斬られ役の役者をバッタ、バッタと打ちのめすのは不自然だ。

 2時間スペシャルの「相棒」は期待していただけに見ていてがっかりだった。

 僕が男の好みを言うのは自分でもおかしいと思うが、長年『薔薇族』を藤田竜君と出し続けてきたので、いつの間にか藤田好みの男が好きになってしまったのか。

 藤田君に聞いたわけではないが、及川光博なんていう役者は、彼も好きではないだろう。短髪でスカッとした男を選んでほしかったと言うに違いないのだ。

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2009年10月16日 (金)

大きく羽ばたくか「古書ビビビ」

 下北沢の南口商店街は、つぶれる店はあっても、しばらくすると、また新しい店が誕生する。しかし、裏通りや横町に入ると、シャッターが降りたままになっている店が目立つようになってきた。

 金、土、日はなんとかお客が入るが。平日はガラガラの店が多い。人はたくさん歩いているが、お金を持たない若者ばかりだ。

 コーヒー200円の「イタリアン・トマト」からガラス越しに歩いている人の姿を眺めていても、高価な服装を身に着けて歩いている人の姿は少ない。

 みんな収入が少なくなって、お金を使えなくなってきていることは間違いないようだ。

 茶沢通りに面しているので、クルマの往来は激しいが、下北沢の繁華街から見れば場末と言える「鈴なり横丁」、2階は小さな劇場になっていて、1階は小さなバアがひしめいている。その角に「古書ビビビ」がある。

 『薔薇族』の復刊号を置いてもらおうと訪ねたが、「うちは古書店なので、新しい本は置けません」と、若いご主人に断られてしまった。あきらめずに何回か顔を出しているうちにようやく置いてもらえるようになった。

 そのうちに若いご主人が、僕の後輩だということを知った。駒沢大学文学部国文科の出身と聞いて、急に親近感を持ってしまった。国文科の学生は少ない、まして東京在住の卒業生は少ないのだ。それからは僕のブログで紹介したり、古書を持ち込んだりして応援している。

 「古書ビビビ」が、小さな店から「タウンホール」の筋向かいの広いお店に移ったのだ。家賃も倍以上になるし、この不景気な世の中に大丈夫かと心配になるが、結婚もしたし、若い2人で頑張ろうということだ。

 この6月に彩流社から刊行した僕の本、「裸の女房」を5冊置いてもらっているが、残念ながらまだ1冊も売れないのだ。「朝日新聞」に記事にしてもらって、それをきっかけに売り込もうと考えていたのに取材してもらえなかった。

 共同通信の文化部の記者が、カメラマンを連れてきて取材してくれて、全国の地方の有力紙に写真入りで読書欄に載ったのに、それほどの効果はなかった。

 『薔薇族』のことを初めて「朝日新聞」に紹介してくれたK記者、『薔薇族』が6年前に廃刊になったときも記事にしてくれ大反響を巻き起こした。

 「裸の女房」のこと必ず書きますよと電話してくれて3ヶ月が経った。もう記事にならないとあきらめていたのに、10月6日、取材に来てくれるという電話がかかってきた。

 本が出版されたことだけで僕は満足しているので、「朝日新聞」が、伊藤ミカという33歳の若さで死んでしまった舞踏家が、1960年代という時代に生きて素晴らしい足跡を残したということを書いてくれる。

 それとその記事を読んで大きく羽ばたいて飛躍しようとしている「古書ビビビ」に置いてある5冊の「裸の女房」が売れてくれれば、それだけで満足だ。

★「古書ビビビ」 〒155-0031 北沢1丁目-40-8 ☎03(3467)0085 火曜日定休 営業時間12時〜午後9時迄 下北沢の南口に出てタウンホールを聞いて下さい。小田急バスだと三軒茶屋のスーパー西友の前から終点タウンホール下車。タウンホールの筋向かい。

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2009年10月15日 (木)

信用金庫は庶民をいじめる悪代官か?

 民主党に政権が変わって、亀井静香・金融郵政改担当相が、中小企業向け融資や住宅ローン返済を3年程度猶予する法案を提出するという。

 今まで自民党の議員で、こんなことを言い出す人はいなかった。いろいろ問題はあるようだが、弱い者の味方になる大臣が現れてきたことはありがたいことだ。

 地元の信用金庫は弱い者の味方のようなことを言ってきたが、内情は高利貸しより悪らつと言っていいだろう。

 僕は水戸黄門をテレビでいつも見ている。悪代官が懲らしめられる話しは、見ていてすかっとするからだ。

 平成5年11月に女房の古里の新潟県弥彦村に「ロマンの泉美術館」をオープンさせたが、そのための建設資金は地元のS信用金庫から借入れ、その担保として50坪の土地と家が当てられることになった。

 借りてお金を返せなくなったのも悪いが、貸す方にだって責任が全くないとは言えない。当時の支店長は定年で辞められて、孫が生まれたと年賀状をよこしている。

 利子が高すぎると何度も貸付係に頼んだが、のらりくらりと下げてはくれなかった。10年間は何とか月に100万円返済し続けたが、雑誌は廃刊し、収入がなくなってしまってからは地獄だった。

 会社の経理は次男の嫁が担当していたので、貸付けの窓口に行くたびに脅かされる。3ヶ月滞納したら、家を取るぞと言われるものだから預金を全て吐き出し、生命保険も解約、それでも払えなくて親族から借りた。これだって限界はある。最後は僕ら夫婦と息子夫婦が100万円ずつのローンを無理矢理組まされた。それで4ヶ月分は返済したが、それで終わりだ。「どっちにしたって返せなくなるのだから返済するのを止めろ」と何度も嫁に言ったけれど、僕に悪いと思ったのだろう。75年も住んでいた家と土地を取られるのだから、最後まで嫁は持ちこたえてくれたが、もうどうにもならなかった。

 後で知った話しだが、65歳以上の老人はローンを組めないというのに、なぜか70を過ぎた僕にもローンを組まされた。

 僕は家がなくなっても、ああ、なくなったなとしか思わなかったが、女房はこたえたようだ。3階建ての言えから6畳2間のマンション暮らしになってしまい、そのストレスから十二指腸潰瘍の手術を受けることになってしまった。それからは太れなくなって、今では骨と皮の状態だ。

 そんなことがあっても、僕らは何とか乗り越えて暮らしているが、最近、ショックな話を聞いてしまった。

 S信用金庫のそばに建つ7階建てのマンション、このオープニング・パーティに出席した時に、この建物の設計者のSさんと出会い、Sさんに「ロマンの泉美術館」の設計を依頼してしまった。

 このマンションの竣工が平成5年の2月、美術館のオープンが11月、とんとんと出来上がってしまった。

 やはりS信用金庫から多額の資金を借りて建てたのだ。

 このマンションのオーナーのIさんと僕の女房が街で出会ったら、「大変なことになっている」とぼやいていたそうだ。

 それからまもなくの9月の地元の八幡神社の祭礼の頃、Iさんの奥さんがマンションの屋上から身を投げて自殺してしまった。マンションの部屋の借り手が少なくなって、計算通りに返済ができなくなってしまったのを苦にしてのことだろう。

 支店長がひょこっと顔を出して転勤になるということを告げにきた。

 この支店のお客さんの会の会長を、僕は20年ほど勤めたが、年に一度の総会のおりには理事長が出席して、「S信用金庫は今年も何十億もの利益を出している」と自慢げにしゃべっていた言葉が妙に記憶に残っている。

Photo廃墟になってしまった美術館

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2009年10月10日 (土)

世の中、「NOHOHON」といきましょう!〜竜超君たちが作った話し合いの場

 30数年前、昭和7年に建てられた木造2階建ての家を取り壊して、鉄筋コンクリート造りの3階建ての『薔薇族城』を建てることができた。

 その建物の設計も、工事も世田谷学園の同級生が請け負ってくれた。工事を引き受けて売れた加藤君、ガンで亡くなったしまったが、余命半年と医師に宣告されてから、お客さんや社員に迷惑がかからないよに、すべてを整理してあの世に旅立ってしまった。

 9月24日の夜9時からのJNN50周年記念ドラマ「天国で君に逢えたら」は、05年、ガンのため38歳の若さで亡くなったプロウィンドサーファー、飯島夏樹さんが残した小説を基にドラマ化したものだ。

 千葉の南房総のガン治療センターに勤務する精神科医・野々上純一(二宮和也)が、末期ガンで余命幾ばくもない患者と話し合う場を作り、様々な患者の話し相手になるという感動的なドラマだった。

 『薔薇族』の読者とガン患者を一緒に考えるわけではないが、僕も読者と直接話し合える場として、新宿に「伊藤文学の談話室・祭」を作ったことがあった。

 ハッテン場やゲイバアなどに入れないような読者が、僕が経営している店ということで恐る恐るだが扉を開けて来てくれた。しかし、僕が毎日、店にいるわけに行かないという悩みがあった。従業員任せではどうにもならないことで止めることになってしまったが・・・。

 『薔薇族』の読者は気の弱い人が多く、どうしてもはけ口がなくて内向的になってしまう。うつ状態になってしまっている人にも出会うことが多かった。

 今の世の中、便利になってきて、パソコンを扱い、ネットで仲間を見つけることができるようになってきた。それでも若い人でネットを使えても、ネットを使って仲間を見つける勇気がない人もいるに違いない。

 僕の家には第二書房の時代から使っている電話がある。 古い雑誌を見て電話をかけてくる人がたまにいる。その人たちはかなり年配の人でネットなんて扱えない。話し相手が欲しいと訴えてくるが、今の僕にはどうすることもできない。一日、誰とも話をすることなく過ごしている老人もいるに違いないのだ。

 『薔薇族』の何度目かの復刊に尽力してくれた竜超君が、友人3人とお金を出し合って、東高円寺の蚕糸の森公園の前に、3階建ての2階、3階を借りて仲間との話し合いの場を作った。家賃は8万5000円で、4人で払っていくそうだ。

 「高円寺・NOHOHON」と名付けた話し合いの場だ。

 9月26日の3時から、僕がおしゃべりをする会が開かれた。竜君のブログだけで知らせただけなので、参加者は男3人、女1人の4人だけ。

 それでも僕は3時間も、山川純一君の話などをしゃべりまくってしまった。ここには山川純一君の「やらないか!」のTシャツ、復刊号の『薔薇族』や竜君の蔵書なども置いてあって売れるものと図書室のように見るだけのものとがある。

 毎週、土曜日には話し合いの場を作っているそうだ。月の最後の土曜日の3時頃から、僕も参加して話をしたいと思っている。

 竜君の蔵書で、昭和60年8月1日発行の「Pジャンク」という創刊号の雑誌が置いてあった。限定3000部とある。発行者は林宗宏さん、この人、確か「エロチカ」という雑誌を出していた方だと思う。驚いたのは、僕が経営していた女性だけのお店「リボンヌ」の広告が載っているではないか。僕がデザインした広告だと思うが、まったく忘れていたので「NOHOHON」というしかない。

Noho1
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★『薔薇族』の注文の方法は、郵便局で千円の定額小為替を作ってもらってお送りください。155-0032 東京都世田谷区代沢2-28-4-206 伊藤文学

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★新しく『薔薇族』を置いてくれる古本店・「ビビビ」が下北沢にあります。〒155-0031 東京都世田谷区北沢1-45-15 スズナリ横丁1F・北沢タウンホールの筋向いです。読者好みの古書が沢山置いてあります。電話03-3467-0085です。

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2009年10月 8日 (木)

カミングアウトすることって難しい。

 ブログを書き続けていて、それをネット上で自分で見ることができない。まして読んでくれている人の反響など知る由もない。

 今日も「古書ビビビ」に立ち寄って、僕のブログを見せてもらった。原稿用紙に書いた原稿を郵便で送ると、ネット上で見れるようにしてくれている人に、なんと感謝の言葉を述べたらいいことか。本当にありがたいことだ。

 大原麗子さんの孤独な死のことを書いたらメールで感想を寄せてくれた、レズビアンの方がいた。息子が紙焼きにして持って来てくれたので読むことができた。滅多にレズビアンの人の本音を聞くことはできないので、紹介させてもらうことをお許しください。

 「私は29歳のレズビアンの会社員です。昔は地元の小さな書店に『薔薇族』や『さぶ』が売っていて、10代の女の子でありながら、それを買ったことがあります。
 最初は自分の性を興味でしかないと思っていました。私は男性ともお付き合いをしたことがありますが、ゴールにたどり着かず、タイプが違うのかと思い、あらゆる性格、外見の違った方と知り合いました。
 セックスが合わないのかとも思い、SMから知り合ったりといろいろな方法を試しました。男性と付き合いながらも、女性と恋愛をしていたこともあります。
 20代前半のことでしょうか。当時付き合っていた彼女と毎晩のように電話でケンカをしていて、それが母親にばれて、しまいには電話の相手が女性なのではと母が気づいたようです。親の勘というものは恐ろしく鋭いものです。
 私は親に甘えていたのでしょう。自分の親なのだから、私のことを理解してくれるはずだと疑わず、勢いでそれを認め、つまりカミングアウトをしました。
 その後、私のカミングアウトのせいで、母はアルコール中毒まがいになり、自殺未遂も起こしました。テレビでオカマちゃんが写れば吐き気がするとチャンネルを変え、私が女友達の話をしようものなら、その場で泣き崩れてモノを投げるなど、とてもじゃありませんが、私にとっては惨劇そのものでした。
 それ以来、男性と付き合うことに専念し、母親の気持ちが落ち着くように努めました。ちょっと付き合っただけの彼氏を母親に紹介したり、友達の写真を彼氏だと偽ったり、小手先だけでやりくりした数年間でした。
 今は母が私のことをどう思っているのかはわかりません。
 29歳になって結婚の匂いもさせないことにどう思っているのかもわかりません。でも、私はレズビアンです。女性が好きです。男性に恋愛感情を持ちませんしセックスもしたくありません。
 ただし、たとえ親だからといって、セクシャリティを理解してくれということは私自身のわがままなのかもしれないと思います。
 伊藤さんの大原麗子さんの孤独死についての記事を読みました。レズビアンは非常にプライドが高い人が多いように見受けます。マイノリティという小さな村社会の中でプライドだけ高く、一方では自分自身に対する劣等感の強い方だったのかもしれません。
 私は将来的には結婚をしたいと思っています。母親には安心して死んでほしいですし、家の問題もあり、結婚できるに越したことはありません。でもノンケの男性と恋愛をしてセックスすることは難しいことです。
 伊藤さんのブログに出会えて良かったです。伊藤さんがいらっしゃることが、私にとってどれだけ勇気づけられていることか。」

 ゲイの人と結婚ということも考えられるが、異性とは結婚しない方がいいのでは。親孝行は別なことでもできるのでは。

Photo25年ほど前、僕が経営していたレズビアンバアの広告。全く忘れていました。今はありません。


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