2009年12月29日 (火)

『薔薇族』的な親友との出会い

 1カ月ほど、僕のブログが更新されなくなって、心配された方も多かったと思う。自分でワープロを打ち、更新できるにこしたことはないのですが、それができません。「お父さん、ブログをやってみませんか」と、次男の嫁が声をかけてくれて、ずっと続けてくれていたのですが、仕事が忙しくなって投げ出されてしまった。

 途方にくれていたときに、「僕がやります」と声をかけてくれた、僕のファンがいて、その方にボランティアでお願いしていたのだ。

 今の世の中、何が起きるかわからない。その方が急に会社を辞めることになってしまって、僕のブログの手助けなどしている状態でなかったようだ。

 やっと落ち着かれて、「今まで通りやります」と力強くありがたい言葉をかけてくれた。

 僕も長い間、執念を燃やして書き上げた『裸の女房』が、全国の有力地方新聞、そして朝日新聞が大きく取り上げてくれたにもかかわらず、売れなかったことにがっくりしてしまって元気をなくしていた。

 時代が変わってしまって、本が売れない時代になり、ネットで本を読むようになるだろうと言われている。今では本になっただけでも満足すべきだとあきらめてはいるが。。。

 
 年の暮れになると過ぎ去りし日のことが思い出される。国学院大学の教授だった阿部正路君、無二の親友といえる友人だが、すでにこの世にいない。

 僕が卒業論文の斉藤茂吉論を書けないことを心配して代筆してやるよとまで言ってくれた。頭のいい阿部くんなら、いとも簡単に書いてしまっただろうが。

 その後、『薔薇族』を創刊してからは、何度も原稿を寄せてくれた。ただし、恩師の折口信夫のことだけは書かないよと言われてしまっていた。

 創刊5年後に、新宿に「伊藤文学の談話室」をオープンさせたときに、「祭」という店名を考えてくれた。目の前の美輪明宏さんのお店が「巴里」だから、「巴里祭」で、いい店名で本当に祭の日のように多くの読者が集まってくれた。

 『薔薇族創刊百号』の記念号に、阿部くんは「若葉の風ー伊藤文学君のこと」と題して文章を寄せてくれて、初めて彼と出逢ったときのことを書いている。

 「まさに若葉の風だった。彼はとっても新鮮で、そして、いつも不意にあわられる。
 伊藤文学。彼は、いつのまにか、僕の青春の、ほとんどすべてだった。
 伊藤文学。彼は、、僕の青春の友であったばかりではなく、今では一層たしかに、僕の壮年の友であり、生涯の友でありつづけるに違いない。
 伊藤文学君と初めて逢ったのは、昭和25年の5月、東京大学の三四郎池のほとりだった。ーーじっといて池の面を見詰めてゐると、大きな木が、幾本となく水の底に映って、其又底に青い空が見える。
 これは夏目漱石の小説『三四郎』の一節だ。僕もまた、あのとき、じっとして、池の面を見つめて、大きな木が、幾本となく水の底に映っているのをながめていた。池の底に青い空が見え、たくさんの鳥たちのように木の葉が遊んだ。まさに若葉の季節だ。すると美しい水の底の青い空に、白い若者の顔があらわれた。いかにも美青年であった。あたかも夏目漱石のえがいた三四郎のように、田舎から出てきたばかりの僕の目に、その美青年の瞳がひどくまぶしかった。それが伊藤文学君であった。」

 なにか『薔薇族』的な、美しく、ドラマチックな出逢いだった。もう半世紀以上も前の話だ。

 友人たちが次々と、この世にいなくなって冷たい風が身にしみるようだが、年が変わってもブログを書き続けるので、ぜひ、見ていてください。

Photo阿部正路君と出逢った頃の僕。

★『薔薇族』の注文の方法は、郵便局で千円の定額小為替を作ってもらってお送りください。155-0032 東京都世田谷区代沢2-28-4-206 伊藤文学

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2009年12月19日 (土)

挫折乗り越え出版した本が朝日に!

 今年の日本シリーズで優勝した巨人軍の阿部捕手がお立ち台の上で「最高で〜す!」と叫んだ、あの気持ちが僕にも当てはまる。

 1970年(昭和45年)の1月11日、33歳の若さで酸欠死してしまった先妻の舞踏家、ミカ(本名・君子)。あれから39年の長い年月が流れ過ぎている。

 マスコミに多くの話題を提供したミカが亡くなった時、週刊誌やスポーツ紙がその死を報道してくれた。

 それらを読まれた女流作家の丸川加世子さんが、ミカのことを小説にしたいという申し入れがあり、日記、写真、週刊誌などの切り抜き帖などをお貸しした。

 仙台の七夕祭りに行く超満員の夜汽車の中でのミカとの出会いから事故死するまでの15年間を何日もかかって話をした。

 1971年(昭和46年)の8月1日発行の『小説現代』(講談社刊)に、「被虐の舞踏家」というタイトルで掲載された。

 その後、1周忌も待たずに再婚し、日本初の同性愛誌『薔薇族』を創刊させたことで忙しさにまぎれて、丸川さんに資料をお貸ししていたことなど、すっかり忘れてしまっていた。

 しかし、ミカにとっては作品の芸術性よりも「裸」ということだけに、マスコミのスポットが当てられてしまったことを気にして、なぜ、裸で踊るのか、なぜ、性をテーマにした踊りを創作するのかということを世の中の人に訴えたかったに違いない。

 それができるのは僕しかと思うと、なんとしても本として残しておきたいという思いがつのるばかりだった。

 なんとすっかり忘れていた丸川さんにお貸ししていた資料が数年前に戻って来たではないか。まさにタイム・カプセルのふたを開けるような思いだった。

 しかし、それからが僕にとって、次から次へと多くの試練が待ち受けていた。『薔薇族』の廃刊、左膝の人工膝をつける手術。75年住み慣れた家と土地を信用金庫にとられての狭いマンションへの引っ越しと。

 6畳2間だけの狭いマンションでは、机に向かって原稿を書いているすぐそばに女房が座っている。

 女房の久美子が知らんぷりしてくれていなければ、この本は生まれなかった。世界大不況の中、ネットの出現で、今や出版界は苦境に追い込まれている。2社に断られ、やっと彩流社が出版を引き受けてくれたが、初刷りはたったの2000部だ。

 6月に出版され、共同通信社文化部が、すぐさま僕の写真入りでインタビュー記事を全国の有力地方紙、30紙に配信してくれたというのに、ほとんど反響がなかったそうだ。

 朝日新聞社会部の小泉信一記者、10年ほど前に、初めて『薔薇族』を紹介してくれた人だ。小泉さんは人情に熱い人で、下町の売れない芸人などを記事にしたりしている。著書に『東京下町』(創森社刊)があり、最近、朝日新聞出版から『お〜い、寅さん』(本体900円)も出された。

 自ら志願して日本最北端の稚内におもむき、支局長を勤めるなどの変わり者だ。そこで記事にした高倉健の話を読んで、朝日新聞の社長さんが感動して小泉さんに電話をかけてきたそうだ。

 小泉さんは自分が書いた『裸の女房』の記事のゲラ刷りを読んで、涙を流したと電話をかけてくれた。短い文章の中に、全身全霊をこめて書く。心のこもったいい記事を書く記者は少ない。そんな小泉記者が記事にしてくれた僕は幸せ者だ。

 もう本は売れなくてもいい。朝日が記事にしてくれたということは大変なことなので、まさに「最高で〜す!」と叫びたいぐらいだった。。

 銀座のキャバレー「白いばら」での出版記念会、この不況のおりに、、大枚1万円の会費を払って集まってくれた多くの友人、知人たち。出席できないのにカンパしてくれた人たち。こうした僕を支援してくれる良き友人、知人たちがいる限り、いい仕事を残して多くの人たちの友情に報いたいと思っている。

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2009年12月18日 (金)

ちいさい秋みつけた

 誰もが口ずさむ、サトウハチロー作詞(1903〜1973)・中田喜直作曲(1923〜2000)の童謡だ。

 2009年12月5日(土)の朝日新聞に、この歌の誕生秘話が載っていた。

 「風変わりなハゼの木が1本、東京都文京区の礫川(れきせん)公園に立つ。中央の幹は切り株となり、周囲から5本の枝が天に伸びる。
 樹齢約80年のこの木は8年前まで、約2キロ離れた同区弥生の家の庭にあった。家の主だったのは詩人のサトウハチローだ。
 1955年の秋、ハチローは1階の書斎の床に敷いた万年床に寝そべったまま、西向きの窓を見上げた。目に映ったのは、夕日を浴びて深紅に染まる高さ8メートルのハゼの木の葉だ。この年の秋は寒気の訪れが早く、陽光に透けた葉の赤色が鮮やかだった。」

 ハチローはNHKの作詞の依頼で、「大人も子供も歌える叙情歌を書きたい」と考えていた。「全山紅葉の秋でなく、我が家の小さな庭に忍び寄る秋を書こう」とも思っていて、その時、このハゼを見て作詞したのが「ちいさい秋みつけた」だった。

 文化の日に13歳の伴久美子の声でラジオに流れた。放送は1回きりで歌はそのまま忘れられていた。

 だがラジオを聞いて「背筋に電流が走った」ほど感激した人が、キングレコードのディレクターだった長田暁二さん(79)だ。

 ところがハチローはコロムビアの専属、ハチローがフリーになるのを7年も待って、62年にレコード化を持ちかけた。

 長田さんが手がけたボニージャックスが歌った「ちいさい秋みつけた」は、同年のレコード大賞童謡賞を受賞した。その後、長田さんは倍賞千恵子の「下町の太陽」もヒットさせている。

 昭和39年の秋頃だったろうか。この長田さんと僕とは駒沢大学での同期生で、僕は国文科で、長田さんは佛教学部だった。僕は文芸部の部長、長田さんは児童教育部の部長、わずかな予算だったが、いくつかの部で予算をふりわける会議は、夜遅くまで続いた。

 卒業後、キングレコードに入社した長田さんを訪ねて、文芸部の集会室みたいなとことに、歌手や作曲家、作詞家などが団らんしているとことへ良く行ったものだ。

 その頃、『ぼくどうして涙がでるの』を出版しようと思い立っていたときなので、序文をサトウハチローさんにと思い、長田さんに紹介を頼んだ。

 丁度、サトウさんの庭にハゼの木が深紅に染まっていた頃だ。東大裏のサトウさんの家に長田さんと一緒に訪ねて序文をお願いしようと思ったのに、長田さんとサトウさんは仕事の話ばかりして、僕が話を切り出すいとまがなかった。

 結局は詩人の竹内てるよさんに序文をお願いしてしまった。

 「こんど文学さんが出すこの本も、病気をする苦しみは、病んだことのない人にはわからないからといって序文を頼まれました。」と言って素晴らしい序文を書いてくれた。

 「文学さんのすることは、どんなことでも、一つの大きい愛につながっている場面があるのだという信念です。」とも書いてくれた。

 しかし、長田さんは僕の願いを聞いてくれて、僕が作詞して(藤井弘補作)、レコード化してくれた。歌は6人の女性コーラスグループの「ヴォーチェ・アンジェリカ」が歌ってくれた。

 日活で映画化されたとき、タイトルの文字は僕の字で、歌も流れていい気分だった。

 昭和40年の秋の芸術参加作品で、この映画のビデオが出て来たので、「高円寺NOHOHON」で、26日9の3時から見る会を開くので、特に女性の参加を待っている。ネットで「高円寺NOHOHON」を検索して場所を見つけてください。

Photo吹き込み中の長田さん。


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2009年11月19日 (木)

朝日と毎日の記者が呑み友だち

 「毎日新聞」は、この人の書いた記事を読みたいために購読しているようなものだ。編集委員の鈴木琢磨さんだ。

 2001年の11月6日(金)の「毎日新聞」の夕刊に、鈴木琢磨さんが「おーい寅さん」というエッセイを載せている。

 鈴木さんは「朝日新聞」の下町記者、小泉信一さんと呑み友だちのようだ。僕はまったくと言っていいほど、酒を呑まないから、赤ちょうちんがぶらさがっているような店には入ったことがない。

 77歳にもなって後悔したってはじまらないが、やはり酒を呑みかわしながら話をしないと、深い付き合いは生まれないのでは。鈴木さんはこんなことを書いている。

 「〈6時、雷門〉。朝日新聞の下町記者、小泉信一さんからメール。夕刊で連載していた「ニッポン人脈記『おーい、寅さん』がめでたく本になったとかで、それをつまみに一杯いかが、と。もちろん断る理由などなし。」

 いいな、朝日の記者と毎日の記者が、こんなメールのやり取りで出会って酒を呑むなんて。

 小泉信一記者は初めて『薔薇族』を紙上に登場させてくれた恩人でもある。僕の著書『裸の女房』のことも必ず記事にしてくれると信じている。

 1960年代に大活躍し、33歳の若さで事故死してしまった、僕の先妻、舞踏家の伊藤ミカ、舞踏に打ち込んだ生き様をきっと記事にしてくれるだろう。

 鈴木さんはこんなことも書いている。

 「でも、下町記者もつらいのよ、のはず。『おう、てめえ、さしずめインタリだな』。ひょっこり寅さんが現れたら、そうタンカを切られるんじゃないの?朝日の名刺なんか持っていたらね。でっぷりした体をちょっと縮めた。『とにかくコロッケ食べてよ。炒(い)りブタもいけるから』。うまい。
 すっかりできあがって河岸替えしたらしい。いつしか伝説のストリッパー、浅草駒太夫さんのカラオケ酒場『ベル』で飲んでいる。『本、もってきなさい。売ってあげるわ』。ママも小泉信一ファン。『渥美清さんの本格評伝を書こうと思って』。照れくさそうにぼそっ。旅から旅、休みをつぶしての取材が続く。」

 小泉信一さん、朝日の記者というと、スーツをきちんと着て、いかにもインテリという風貌を想像するが、小泉さんは太っていて体もでかく、無精髭をはやしていて、北朝鮮のキムジョンイルの長男に似ている。『おーい、寅さん』(朝日新聞出版刊、本体価格900円)、下北沢北口の博文館書店で購入したが、とにかく本の値段が安い。刷部数が多いと、こうも定価を安くできるのか。僕の本は並製で定価が2100円、刷部数が少ないから、この値段になってしまうのだろうが、この不景気な時代では、2000円を越したら手を出さないのだろう。

 鈴木琢磨さんは、同じ日の「毎日新聞」に「不景気しみじみ秋景色」というタイトルで今の時代を描き出す、長い記事を載せている。「不景気である。『貧困』の時代が続く。でも人は生きている。けなげなまでに。夜のちまたで拾った、しみじみ東京秋景色ーー。」と前書きにある。

 僕は夜の新宿ゴールデン街などに足を踏み込んだことはない。鈴木さんの文章には、しみじみとした庶民の哀愁がただよっている。

 厚生労働省が発表した相対的貧困率、この先進国で7人に1人が貧困状態とか。僕も間違いなくその中の1人に違いない。

 生ビールが1杯、190円、そんな安い店に呑みに行くか。

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2009年11月10日 (火)

ついに『薔薇族』を買っちゃった!

 本当は未成年者に買ってもらっては困る雑誌なんだけど、中学生、高校生の読者も多かった。

 当時はネットなんてものがなかった時代、その頃の中・高生は手紙で、文章も上手だった。山形県の浪人生から送られてきた手紙。

 「聞いてください。ついに、ついに買ったのです。今までいつかきっと買うぞと心に決めていながら、表紙だけチラッと見ていた『薔薇族』を、今日こそついに手に入れたのです。おおげさのようでも、本当の話なのです。
 今日、学校の帰りに、いつも寄る本屋と違う本屋さんに行って、蚊の鳴くような声で(本当はちゃんと声を出したつもりだったのだけど、出てなかったみたいです)、『あのう、これください』と言って、『薔薇族』を店員さんに差し出したときの気持ち。本当にカーッとなって、千円払ってお店を飛び出しました。なんとなくバカみたいですけど、初めて買うんだもの、ただひたすらっていう感じです。だけど千円はちょっとばかりきつかったなあ。僕のような貧乏学生には(正確には浪人生)、千円は大変な大金なのです。でもぐちはよしましょう。夢にまで見た『薔薇族』が目の前にあるのではないの。
 家に帰る時の足取りの軽いことといったら、大雪もくそくらえ。部屋の中にいちもくさんに駆け込み、カバンの中から取り出す時、思わず震えてしまったりして。そのとき階段をトントン上る音がして、おばあちゃんのお出まし。『ワッ!』と思ってカバンの中へ、急いで隠して一安心。
 『このクソババア、なにしに来やがった』と内心思いながら、うわべは平静を装い、『なにか用?』『ウン、ちょっとつけものの石とってけろ!』
 つけもの石を物置から取って来て、『ばあちゃん、勉強してっから二階さくんなよ』と言って、またバタバタと二階へ。
 やっと落ち着いてみられる。再度カバンの中から取り出し、しみじみと表紙を眺めながら、『ああ、ついに買えたのだ』と、涙を流さんばかりに感激して、持つ手はまたも震えが止まらなかった。
 それにしても表紙の人はなんと美男子であることか。『絵に描いたような』とはまさしくこのことであろうか。
 今更ながら自分の顔のアンバランスさが気になり、鏡の前で見比べると、みじめになったり絶望したり。しかし、コノオ!こんな美男子がいるものか、男は心だとひらきなおって表紙をめくると、刺青をしたお兄さん。これまたすごい。さぞかし痛かったろうと思いながら見ていくと新発見。刺青とはマジックで書くものなのでしたか。
 ああ、僕はなんというカンちがいをしていたのであろうか。なんとオロカシイことか。でもホンモノなのかなあ?
 全体的に明るくて、思ったより真面目で、そうして真剣に考えているところがあって、単なる雑誌じゃないような気がしました。」


 こんな思いをして、初めて手にする雑誌なんて、世の中にそうあるものじゃないから、作り手としてはこんなにうれしいことはありません。
 
 この浪人生、翌年には大学に入れたのだろうか。マジックで刺青を描く老人、高倉健の身体にも刺青を描いた有名な人、もうとうにこの世にいないけれど、我が家の座敷で、何時間もかけて刺青を描いてくれたのを思い出す。

 浪人生、今頃はいいオッサンになっていると思うけど、どんな人生を送ってきたのだろうか。みんな幸せになってくれているといいのだが。

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2009年11月 6日 (金)

オナニーから『薔薇族』へと!

 僕が『薔薇族』を創刊しようと思う、発想の原点になった本がある。今は亡き秋山正美さんの著書、『ひとりぼっちの性生活=孤独に生きる日々のために』(昭和41年刊・第二書房)である。

 この本のあとがきに、秋山さんはこんなことを書いている。

 「自分ひとりの性生活は、人類の歴史とともに実在していながら、地図の上にはいまだかつてのせられたことのない、不思議な大陸のようなものである。それ自体異常ではない性のあり方として認められる諸条件を持ちながら、自分ひとりの性生活は、とかく異常な生活の一部として、無視されたり、さげすまされたり、ゆがめられたりしてきた。」

 この時代に、オナニーのやり方を出す出版社は、僕しかいなかったに違いない。秋山さんはあちこちの出版社に原稿を持ち込んだが、どこも出してくれるところがなくて、僕のところに持ち込んできたというわけだ。

 わが第二書房は、僕ひとりだけの出版社だから会議を開く必要はない。僕が決断すればそれで決まってしまう。

 秋山さんは異性のことを考えながら、オナニーをしている人のために書いている。僕もそう思っていた。しかし、その反響は男のことを考えながら、オナニーをしている男からの手紙が多かったのだ。

 それから僕の発想はひろがっていき、『薔薇族』の創刊へと結びついていったのだ。

 青森県のH坊という、16歳の高校生からこんな手紙をもらったことがある。

 「みなさんは週にどれくらいオナニーをしますか?僕は週に7回ぐらい。やり方はごく普通、変わったことといえば、やるときは必ず素っ裸になることぐらいかな。
 でも、『薔薇族』を手に入れた日は大変です。その日、1日に8、9回、多い日には10数回も。考えられないと思うでしょうが事実です。
 この本の写真を見て、2回ぐらいまでは真っ白なのがドバッと、でも10回ぐらいになるとチョビッと。最後にはチンポが痛くなり真っ赤にはれます。
 この時にはもう、ゴムのようにフニャフニャ。快感よりも痛さの方が先にたつみたい。それでも最後までやり通すのです(何ごともこのようならばいいのですが)。
 でも愛せる相手がいないもん、しょうがないです。僕だって相手に口でされたいと思います。愛し愛されたいです。しかし、とても恐ろしいのです。
 男と男の出会いはすばらしいものでしょう。が、男と男の別れは、ただただつらく悲しいものなのでは? もし自分がそうなった時を考えると、とてもつらい・・・。今のところはオナニーで幸せです。やっぱり僕は異常なのでは・・・?
 オナニーをやった翌朝は、よく自分がホモであることを自覚し、そして誇りを持つように努めています。こうしないと自分を見失うかもしれない僕。最後にひとこと、ホモは異常ではない。」

 猿がオナニーを覚えると、死ぬまでやり続けると誰かに聞いたことがあったけど、オチンチンが真っ赤になるぐらいやり続けるとは。

 この時代には「ラブ・オイル」なんていうものが存在しなかったから仕方がないけれど、相手の男がいたってオナニーをしている人はいっぱいいるのでは。

 僕も学生時代、オナニーで悩んでいたから、それが『薔薇族』につながったということだ。

 人間の欲望って、年齢を重ねても終わりはない。だから生きていられるのかも。

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2009年10月28日 (水)

ヤマジュンの未発表作品が本になるぞ!

 「ヤマジュン」旋風がネット上で、巻き起こってから、すでに6年が経過しているというのに、その人気は衰えることを知らない。

「ウホッ!!いい男たち」が「復刊ドットコム」から発売されたのが2003年の10月のことだ。

 定価が本体4800円+税というような、劇画の本では珍しいほど高価な本が、すでに版を重ねて6刷りにもなっている。

 この本には『薔薇族』誌上で発表された、すべての作品が納められ、35作品が掲載されているが、まだ未発表の作品が何作かあったのだ。

 3年前、地元のS信用金庫の借金の担保になっていた50坪の土地と家、75年も住み慣れていた僕の家だ。無惨にも家を明け渡すことになり、追い立てられるように荷物を片付けはじめた。

 親父の代から荷物をかなり処分したが、捨てられないものは、段ボールに詰め込んで何台ものトラックで新潟の金庫に運び込んだ。

 何作か未発表の作品が残っていることを記憶していたが、3階の金庫のようになっていた部屋の下積みになっていた中から茶封筒に入ったヤマジュンの作品を見つけ出したのだ。

 封筒の中には、16頁1作品の4作品が入っていたではないか。S信用金庫に家をとられなければ。永久にこの4作品は見つからなかったに違いない。

 ヤマジュン作品を毛嫌いする編集スタッフの「やめさせろコール」に負けないで掲載を続けていたら、ヤマジュンはまだまだ作品を書き続けていたに違いないが、今更悔やんでもどうにもなるものではない。

 それだけにこの残された4作品は貴重なものと言っていいだろう。

 10月末日に社名を「復刊ドットコム」と変えた会社から、この4作品を納め、ヤマジュンのイラストを使った「やらないかバンダナ付き」の「ウホッ!!いい男たち2・ヤマジュン・未発表作品集」が発売される。

 バンダナ付きの限定版は初版だけで、増刷したとしてもバンダナは付いていない。「復刊ドットコム」にアクセスして早めに注文してください。

 僕としてもこの本の出版は何とも嬉しい気持ちでいっぱいだ。

Photoやらないかバンダナ


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2009年10月22日 (木)

ぼくの子供がホモだとしたら

 今から32年も前の『薔薇族』の「伊藤文学のひとりごと」の欄に、「ぼくの子供がホモだとしても」と題して、こんなことを書いています。

 「伊藤さんは隠れていないで表に出ようと言うけれど、都会に住んでいるならいざしらず、小さな田舎町に住んでいるものにとっては、ひっそりと生きていくしか方法がないんだ。伊藤さんは自分がホモじゃないから、そんなことを言えるんで、もし伊藤さんの息子さんがホモだと知ったら、そのときどうしますか。
 そんな意味の手紙をある地方の読者からもらいました。確かに僕の子供は男の子が2人いるのです。
 上の子は小学校6年生、そろそろ生意気なわんぱく息子になってきています。いつか少年愛の読者が訪ねてきて、自分が写した何十人もの少年の写真のコレクションを見せてくれたことがありました。どれも裸の写真です。こんな写真を撮れる人って、相手の少年が警戒心を起こさせない人、恐らく小学校の先生だと思うのです。
 自分の息子と同じくらいの子供たちが、裸でいろんなポーズをとっている写真を見て、ショックを受けないとすれば、嘘になるでしょう。自分の息子がそんな写真を撮られたと知ったら、親である僕はどうするでしょうか。
 まあ、そのときのことは、そのときに考えなければ、何とも言えないけれど、自分の息子がホモであったら、これは僕自身、『薔薇族』を刊行し、多くの読者にも会って、ある程度は理解しているのだから、知らなければびっくりもするでしょうが、今の僕ならそれほど驚きもしないと思うのです。そんなことで驚いていたら、自信を持って『薔薇族』を出し続けていけないでしょうから。
 病気でも、変態でもないのだから、子供がそうだからといって、驚く方がおかしいと思うのです。びっくりして精神科へ連れて行くようなことはまずしないでしょう。
 ただ、はっきりと言えることは、もし、そうだとわかったら、息子の将来の進路を親として十分に考えてやるべきでしょう。なるべくなら銀行員とか、公務員にはしないで、才能を活かせるような自由業につかせるべきです。子供の向いている職業につかせることが大事なのでは。
 ゲイの人は神経が細やかで感受性が豊かなんだから、芸術家とか、サービス業、きれい好きで、よく気がつくから水商売も向いていると思う。」

 こんなことを書いていました。僕の2人の息子たちも今では成人して、子供たちの親になっています。

 長男の息子も19歳になっていますが、大学受験に失敗して、塾通いの浪人生で来年の受験に向けて勉強中です。

 この孫が日曜日に自転車に乗って、近くの区立の図書館に行って、静かな場所で自習をしているようなのですが、そこで中年の男性に声をかけられたようです。

 携帯の番号を教えろとか、一緒にゲームセンターに行こうとか、しきりに誘われたとか。そんなことする人は読者に違いありません。孫も僕の話を聞いているから、同性愛の世界は、ほかの若者よりは理解しているでしょうが。

 また、次の日曜日に来るからと、その人は言ったそうですが、僕が出向いて声をかけても良いのですが、結論としてはもうその図書館に行かないことだと、孫には言ったのですが。

 中年のオヤジさん、また次々と若者に声をかけているに違いありません。ねんとも複雑な気持ちです(当時はゲイという呼び名はありませんでした)。

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2009年10月21日 (水)

「相棒」の新コンビはミスキャスト!

 「テレビ朝日」の人気番組、「相棒」の新シリーズが始まった。主人公・杉下右京(水谷豊)と、長年の相棒だった亀山薫(寺脇康文)が前期で退職、代わりに公安畑から〝飛ばされた〟神戸尊(及川光博)が新たにコンビを組む。

 僕はこの新しいコンビは全く気に入らない。キザな杉下右京(水谷豊)となぜ対称的な役者を選ばなかったのか。ごっつい体育会計の短髪でイモみたいな役者とコンビを組むから見ていておもしろいので、杉下右京に輪をかけたような及川光博のキザっぽさは鼻持ちならない。

 ひたいにかかる髪の毛を首を振って持ち上げる仕草を見るといやになる。これは完全にミスキャストではないか。

 夫婦だって亭主がおとなしい人ならば、女房は男っぽい女を選ぶだろう。

 これが「相棒」でうまくいくのだろうかと、見るものに思わせなければおもしろくない。同じような性格の「相棒」ではダメなのでは。

 最近のドラマの製作はテレビ局が製作するのではなくて、映画会社の「東映」に製作させているようだ。その方が製作費が安くてすむからだろう。

 テレビ局も、新聞社も、出版社もみんな苦しくなっている。最近はNHKのテレビだけがよく見えて来るから不思議だ。

 「水戸黄門」にしても、「子連れ狼」にしても古い作品の方がお金もかけているし見応えがある。

 「水戸黄門」の助さん、格さんにしても、今放映中の役者の体格が貧弱で、それが多くの斬られ役の役者をバッタ、バッタと打ちのめすのは不自然だ。

 2時間スペシャルの「相棒」は期待していただけに見ていてがっかりだった。

 僕が男の好みを言うのは自分でもおかしいと思うが、長年『薔薇族』を藤田竜君と出し続けてきたので、いつの間にか藤田好みの男が好きになってしまったのか。

 藤田君に聞いたわけではないが、及川光博なんていう役者は、彼も好きではないだろう。短髪でスカッとした男を選んでほしかったと言うに違いないのだ。

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2009年10月18日 (日)

死のうと思ったら、周囲の人に話せ!

 『薔薇族』の読者から、こんな手紙をもらったことがありました。

 「私がなぜ、この道に入ったのかというと、やはり世間のお定まりのコースを歩んで来たのです。
 あれは中学2年の2学期末の試験勉強をしていて、勉強に疲れた私は外に出たときに、知り合いの人に会い、話をしていて、ふいをつかれて犯されてしまったのです。それ以来というもの、私の体は男にしか反応を示さなくなってしまったのです。
 私は、その人をうらみました。憎しみました。こんな自分になったのをせめ、こんなにさせたその男を・・・。
 高校に入り、1年の学年末、私は自殺未遂をしました。どんなにかこの道から抜け出たいと思いましたが、体がいうことを聞いてくれないのです。
 2年生になり、理解ある担任の先生に恵まれ、その先生に相談していましたが、どうにもならず、2度目の自殺未遂をやったのです。
 先生に支えられて、やっと生きる決心をしたのですが、今度はその担任の先生を好きになってしまったのです。
 こんなことでよいのでしょうか。今でも不安は募るばかりです。」

 「伊藤さんにこの手紙が着く頃には、僕はこの世にいないでしょう」なんて手紙をもらったので、心配して電話をかけてみたら、お母さんが出て、「息子は今、アルバイトに行っています」なんていわれたり、まず死ぬなんて言ってくる人は自殺なんかできません。

 本当に自殺する人は、人に黙って死んでしまいます。我が家と同じように地元のS信用金庫にいじまられて屋上から身を投じて自殺してしまった奥さんの話を書きましたが、今年も自殺者は増えるばかりで、3万人を越すそうです。

 僕の住んでいるマンションの1階にある不動産屋さんの話だと、どのマンションも満室になっているところは少ないそうです。それに入居者に家賃を値切りに値切られるそうで、礼金とか、敷金も1ヶ月分しかとれないとか。莫大な借金をしてマンションを建てた大家さんはみんな返済に困っているようです。

 朝日新聞の10月8日の朝刊に、白夜書房の編集局長の末井昭さんが、「見て見ぬふりせず死者悼ね」という長い記事をのせています。

 ご自分の体験を赤裸々に書いているのですが、小学校に末井さんが入学した頃、お母さんが隣りの家の10歳年下の青年とダイナマイト自殺したそうです。お母さんが32歳のときとか。

 末井さんは自殺について、こんなことを書いています。

 「ひとりで悩んで考えても問題は解決しない。
 だから、まず『死のうと思っている』と周囲に言いふらして、窓を開けることです。死のふちで迷っている人の話は、みんな真剣に聴いてくれるはずです。話しているうちに、何とかなるのに、その発想がなかっただけだった、と気づくこともあるんじゃないかな。
 (中略)
 死者を心から悼んで、見て見ぬふりをしないでほしいと思います。どうしても死にたいと思う人は、まじめで優しい人たちなんです。
 みんなが心から悼んで、1年に3万人も死ぬ事態を議論するようになれば、何を変えなきゃいけないか見えてくる。それが一番の自殺防止になるんじゃないか、と考えています。」

 台風で亡くなった人の話は新聞に大きく報じられて、自殺した人の話は記事にもならない。1年に3万人以上の人が死んでいるなんて、大変な話なのに、近所の人にも自殺したことを隠して内緒にしてしまう。これでは死んだ人も浮かばれないのでは。

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